アルピーヌ A110 エンジン
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A110のエンジンの歴史は、ルノーとゴルディニの歴史といってもいいだろう。ルノーのスポーツモデルのエンジンはゴルディーニの手が入っているし、それをアルピーヌが積んでいるからだ。またその競技用エンジンはミニョッティがチューニングしていることが多い。 最初にアルピーヌA106に積まれたエンジンは4CVものである。このエンジンはキャトルにまで使われたのと同様のブロックでとても丈夫、ルノーの低排気量の定番エンジンである。 このカウンターフローエンジンは1100となり、後に1300ccとなり1300VCの最終後期型(マイナーチェンジはあるが)まで積まれたA110の最多エンジンとなった。 そしてエンジン特性は穏やかではあるが意外と良く回り、スポーツカーのエンジンとしても申し分は無い。またメインテナンスも用意でトラブルも少なく、その設計のよさは、つい最近までトゥインゴ等に使われていたことでも証明されたと言ってよいだろう。 上記のブロックを利用してゴルディーニがクロスフローにしたのが、ゴルディーニエンジンと呼ばれるエンジンである。 そのヘッドはアルミで、半円球式燃焼室とカウンターフローにするためにかなり無理な設計がされている。ベルブ径を大きくするためにプラグを燃焼室に露出させずに副燃焼室といえるような所で発火させ、小さな穴から点火させている。 ただし、このエンジンが速いか?と言われれば疑問もある。グリップしないというかトラクションの悪いエンジンなのだ。エンジン回転のコントロール性はよいのだが、車を押し出すという性質が希薄なのだ。ただ、A110がドリフトしている状態で乗りやすい車だから、相性抜群のエンジンといっていいだろう。 1968年の登場する1600cc系エンジンは最初はカウンターフロー(ロータスヨーロッパと同じ)だったがA110に積まれたのは少数だけで、すぐにクロスフロー・エンジンとなる。これが1600Sである。このオールアルミのエンジンは1300より少しだけ重く、かなり大きなエンジンである。エンジンの高さはエンジンルームいっぱいでプラグ交換もたいへんなほどである。その大きさ(特に高さ)によって操縦性も影響を受けるほどある。しかしそのパワーは絶大で、大排気量車に負けないほどの速さをA110に与えたのである。 さて、そのOHVの速い1600であるが、機構的には意外と変ったところのないエンジンである。半円球燃焼室にするためバルブに角度を持たせるのは1300と同じであるが、そのために無理なことはしていない。カムをエンジン・ブロック上面に置くように配置、ブッシュロッドに角度をつけてロッカーアームを押している。大きなバルブにするために少しだけ横に配置されたプラグ、その大きなバルブに合わせて大きなポート。(アルピーヌだけは吸気だけでなく、排気ポートを大きくされている)少しだけ圧縮比の高いピストン、重量合わせされたコンロッド等と、無理な設計の無い変りに、市販車とは思えないほどに丁寧な作りのエンジンである。これにウエーバー45DCOEを組みあわさて138psと、A110の軽さには十分過ぎるほどのパワーを出している。 このエンジンの性格は1300Sとは正反対で低回転からトルクフルで、押し出すようなトラクションを感じることができる。回りたがるエンジンではないが、シフトダウンしなくても必要なトルクが出せるのでラリーにおいては、最高の武器となったあろう。 |
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