アルピーヌ パッション 完全アルピーヌ・ガイド
アンドレ モンティ

 A310は、コンディションによって、毎回新しいセッティングに替えなくてはなりません。それが難しさでもあり、また楽しみでもあるわけです。

 アルピーヌのファンになったのは、1970年、モンテカルロラリーで、アルピーヌが優勝したときからです。そして学生の時には、南仏のサン・トロペの生家の前のガレージにアルピーヌがあり、そこからラリーに参加する姿を見て、計り知れない憧れを持っていました。
でも、どんなに憧れているとはいっても、学生のときはもちろん、仕事をはじめてからも、なかなか手が届くものではありません。しかたなく、カートをしながら、アルピーヌへの思いだけ募らせていました。

 それが最近になって、やはりラリーがやりたくなり、ついに意を決してクラシックラリーに参戦することにしました。2000年のことです。それから2004年までは、部品の面でも手に入りやすいアルファロメオに乗っていました。

 そして2005年。とうとう憧れのアルピーヌを手に入れたのです。A310です。もちろんA110であれば最高ですが、若い頃以上に入手困難ですからね。でも、A310も私にとっては夢の車に変わりありません。

 手に入れたときは、前のオーナーが、へんな改造をしていたせいで、かなりひどい状態でした。けれど、みんなやり直して、きれいに仕上げました。それで2年間順調にラリーに参戦しました。

 クラシックラリーに本格的に参戦するようになったのは、2007年からです。年間、5〜6戦、出場するようになりました。その翌2008年には、しっかり崖から落ちて、フロントがみんななくなってしまいましたけどね。

 2009年は最高の年でした。優勝したり、表彰台に常に立つことができ、大変にいい成績を残せたと思います。

 A310に乗ってみて感じたのは、思ったよりもサーキットを走る車のようだという点です。足回りのセッティングが出たときは、気持ちよいほど早く走れます。しかし、逆にうまく行かないときには、どうしらいいのかわからない、お手上げ状態です。

 そんな車だからこそ、奥が深いんですね。ビシッと決まったときの喜びは、他には替えがたいものがあります。

 A110にも乗ってみたことがありますよ。それで乗り比べてみて感じたのは、110は、あらゆるシチュエーションに対応できる車だということでした。310と比べると、110は、いろいろな路面にあわせることが比較的容易なんです。でもその点、310は、ひとつのシチュエーションを想定して、それにあわせて組み立てる必要性があるように思えます。

 だから310は、コンディションによって毎回新しいセッティングに替えなくてはなりません。それが難しさでもあり、また楽しみでもあるわけです。310の魅力は、乗れば乗るほど、惹きつけられて行くところにあります。

 それはラリーにもいえるかもしれません。崖から見事に落ちることもありますが(笑)、

そういったトラブルも含めて、ラリーの楽しみでもあるのです。



profile: 南フランス、サン・トロペ生まれ。
A310/1600で、南フランスのクラシックラリーに参戦。
最近ではアルピーヌの常勝組の一人となっている。

写真下は2007年晩秋、ラリー・ド・ヴァールにて