アルピーヌ パッション 完全アルピーヌ・ガイド
パトリック・セテール

 「実は、かみさんよりもつきあいが長いんだよね(笑)」

ベルリネッタマグ51号にも掲載された1600SCのオーナー
74年からワンオーナーで、ほとんど改造もなく178000km乗り続けられている
レモンイエローのアルピーヌオーナーとして、伝説的存在になっている
彼の距離計は、まだまだ伸び続けるだろう


 最初に手に入れたのは、R8ゴルディーニでした。けっこう気に入っていましたが、「次は、やっぱり憧れのアルピーヌにしたい」とは考えていました。
 しかし、いざ買うとなるとなにせ高価ですからね。R8ゴルディーニから乗り換えるのは難しく、しかたがないからR12ゴルディーニに決めました。
 12ゴルディーニは重くて、あまり好きになれませんでした。すぐにでも他の車に買い換えたい気持ちはあったけれど、そうしなかったのは、やっぱりアルピーヌに乗りたかったからなんですね。

しばらく辛抱して貯金を続けた結果、72年に最初のアルピーヌ、1600Sの中古を買いました。しかし程度が悪く気持ちよく乗ることができませんでした。そして74年になってようやく目途がついて、念願のアルピーヌの新車を買いに行くことができたのですが……。
そこで返ってきたのは予想もつかない言葉でした。

「今からだと、最低でも3か月はかかりますよ」

 呆然としました。自分は明日にでもアルピーヌに乗るつもりで、もう1600Sも売った後でしたから。それで困り果てて何とかならないのかと聞いてみたら、係の人に「それならちょっと来い」と、階段の裏まで連れて行かれたんです。
 そこにあったのは、レモンイエローの1600SC。それを目の前にして、「これなら、待たずに乗れますよ。でも、これ以外なら3か月待ち……いや、6ヶ月かも」と言われました。

 どうやら、その車はあるお金持ちの特注品だったようですね。レモンイエローが奥さんの好みの色だったわけで。けれど、いざできあがって夫婦で見に来たとき、奥さんがこれ見て一言。

「トランクが小さいからいらないわ」

そういうわけで、その場でキャンセルされたそうです。特殊な色だから他に買い手もつきそうもないし……ということでアルピーヌとしても困っていた……そんないきさつがあったようです。
 正直、絶句しました。自分の中ではアルピーヌといえば、あのブルーメタリックというイメージが固まっていましたから。でも、もう車もないし、半年なんてとても待てません。
しかたなくその真っ黄色のアルピーヌを購入しましたよ。

 この黄色、買ってからも何度か塗り替えようと思ったんですが、結局色も塗り替えず改造もしませんでした。したのは、ほんのわずかな修理。9万キロの時にクラッチを交換したくらいです。それ以外、ほとんど変えることなくここまできました。
 それがよかったんでしょうね。今では、黄色のアルピーヌの人と地域でも言われるようになったし、それで雑誌にも取材されました。
 この他にもA310やV6ターボを買ったりもしたけれど、大きくて重くて、やっぱり気がついたらベルリネッタに乗ってしまいます。

 買ってからもう17万8000?走ってますが、大きなトラブルで困ったことは一度もありません。
最高の車だと思っています。

写真左: 10万の単位は表示されないメーター。
途中1万キロほどワイヤー切れでメーターが止まっていたそうだ。
写真右: とても17万キロ走ったとは思えないほどきれいなエンジンルーム。
オイルの滲みも少なく、快調そのものだ。